長らく愛用してきたユピテルから出ているレーダー探知機「霧島レイ」シリーズの最新作が出たので、初回ロット時に販売された1000台の購入戦争に勝利してさっそく使うも、どうもしっくりこない。結局のところ知り合いのツテで保証周りの確認を公式にとったうえで譲渡、引き取ってもらったんだけど、なんで最新作を手放すに至ったのか、過去のシリーズと比較して何が違うのかを解説する。
最新作でプラットフォームが刷新
従来の製品は霧島レイシリーズを謳ってはいたものの、その実は既存のレーダー探知機であるSupercat シリーズをベースに構築されていた。これは基盤がLinux ベースで非常にOS としても軽量だったんだけど、それ故かあまりキャラクターを3D で動かしたり等の拡張性はなかった。しかしながら今回の最新作ではAndroid ベースでUnity アプリにしてしまうという大胆な基盤入れ替えをしている。
基盤入れ替えに伴うメリット
基盤がUnity アプリになったことで今まででは難しかった3Dモデリングのキャラクターを派手に動かしたり、不具合の修正パッチがアプリを入れ替えるだけで可能になっている。ユピテルから配信されるパッチも中身はapk ファイルになっていることから以前よりも開発手法もよりグローバルスタンダードに近づき、改修作業が効率化できているのかもしれない。
また基盤を刷新したことから従来のSupercat ベースでは実現することができなかった音声入力によるコミュニケーションを新規実装している。本体前面部に指向性マイクが搭載されていて、これを通じてユーザーが音声でレイからの質問に回答する機能が備わっている。
基盤入れ替えによるデメリット
とはいえ、基盤を入れ替えることがいいことづくめではなくなっている。Android ベースでUnity を動かし、さらにレーザー式オービスの受信機構をはじめとする各種センサーやGPS、衛星信号の受信機構なんかを増やすとどうしても本体の重量が増えてしまうし、排熱機構もUnity を動かすことによって従来の製品と比べると発熱しやすくなっているから内部的にヒートシンク等の取付や排気口の準備なんかが必要になることから本体の厚みも出てしまう。
過去作ではそこまで負荷が増大しなかったから1cm ほどの薄い本体に収まっていたけれど、最新作のLei05 は一番分厚いところで2cm を超える部分も出てきてしまう。重さも前作と比較すると約50g ほど増えてしまっていて重心が下がったにも関わらず台座は前作と同じものだから、搭載する車によっては結構揺れてセンサーの誤反応を招いたりする。隙間に耐震ジェルマットを敷き詰めて固定しているユーザーや、金属の台座を利用して宙吊りスタイルで運用しているユーザーがいたりと、各個人で工夫して振動対策をしつつ設置しているようだ。
不具合、喫緊の要望対応はほぼ完了している
新しいものを世に出した直後だとどうしても社内試験では検知できない事象やユーザー要望などが出てくる。具体的には以下のようなものがあった。
- デバッグモードがオンになったまま、うまく起動しない等の初期不良
- 初期出荷ぶんでオービスデータが入っていない個体があった
- 踏切関連で不具合が複数散見された
- 廃線や高架化された線路の踏切がそのまま残っていて、実際の交通規制に従ってそのまま通行すると一時停止不履行判定になる
- 手前に信号が存在するそもそも一時停止が不要な踏切にも一時停止チェックが実施される
- 実際に踏切前で一時停止をしても一時停止不履行にされてしまう場合がある
- 踏切と並走する道路を走行すると一時停止不履行にされてしまう
- 会話イベントが本体が車速0km/h である時に発動するトリガーになっているため、車庫入れ等で後退中や荷下ろし等で離席している時にも発動してしまう(無視すると後述のペナルティあり)
- カーブ時のG判定が強さではなく、Gがかかっている時間で計測しているらしく、立体駐車場で徐行しながら180度ターンすると通常のGセンサーの設定だと転んでしまう(従来の製品では同じ設定でもこの程度では転ばない)
- 肝心の音声認識が本体下部の指向性マイクからのみとなっており、真正面から話しかけないと聞き取ってもらえない。またカーステレオ等で音楽をかけていると、そちらの音でかき消されてしまい音声を認識してくれない。
- 従来と比べると音割れがひどくなってしまっているうえに、これまでオプション品で販売されていた外部音声出力ユニットを使用することができない。
Gセンサー関連の挙動についてはバージョン1.1.0 で細かく設定できるようになっていること、会話イベントについてはバージョン1.2.0 で機能のオンオフが設定できるようになった。有料にはなってしまうが1ヶ月だけ最新データの更新プランに入ることでオービスデータがない場合でも最新データ入った状態で開始することができるし、踏切関連の不具合も以降の修正パッチで是正されているのを確認している。廃踏切も最新のロケーションデータを入れることで削除対応がなされているようだ。
初期不良などのトラブルも発生していたが、本体交換で事なきを得ているし、外部音声出力等のオプション品に関しても現在鋭意開発中とのことなので、これから新規で購入するユーザーにとっては先駆者が踏んだ数々の不具合やトラブルについては対応済の状態になっているから安心してほしい。
従来の製品との決定的な違い
じゃあ最新作でも問題ないのでは?という意見が出てくるかもしれないが実際はこれらだけの対応ではどうにもならない部分が存在する。繰り返し従来の製品と記載しているが、ここで指し示す従来の製品とは「Lei04」のことを言っている。
根本のゲームシステムが異なる
Lei05 で大きく変わったのが基幹となっている霧島レイ自体のシステムが、Lei04(03, 03+)と同様ではなく、Lei02 を踏襲した好感度システムになっていることが挙げられる。Lei05 がベースとしている好感度システムは、文字通り転ばせることなく安全運転で走行することでレイの好感度が上がり、最大までたまった状態で走行を維持すると好感度レベルが上昇していく。逆に転ばせたり速度違反、一時停止不履行などの違反行為を繰り返していると好感度が一気に下がってしまい、マイナスに振れるとレベルダウンしてしまう。
それ以外にも好感度が増減する仕組みが存在するので、後述する。
会話イベントでの好感度増減
この好感度システムは会話イベントがある意味ボーナスチャンスとなっており、会話イベントでレイが好むような返答や複数の選択肢に応じてアンケート回答を行うと、好感度を一気に最大にすることができる。その反面、嫌がるような回答をしたり無視したりすると好感度が一気に最低値まで減ってしまう。
この会話イベントに関しては前述した通り、車庫入れや荷降ろし中などの話しかけてほしくないタイミングで話しかけてきて回答できず好感度が激減してしまうケースがユーザーから報告がなされている。好感度を上げる手段は地道に安全運転で走行して距離を稼ぐか、ランダム発生する会話イベントで一発逆転を狙う以外の方法が現状ない。
会話イベントの判断方法は画面を見ることだけ
話しかけられているのが会話イベントであるかを判断するには、画面下部にスピーカーアイコンと青色のバーが表示されているかどうかで判断できる。それ以外に方法はない。
イベントの発生は信号待ち等で車速が0km/h になっている時がトリガーとなっているが、先述した会話無視によるペナルティが存在するため常に会話イベントが発生していないかを画面チェックする必要が出てくる。この行為がながら運転になってしまう危険性があるとユーザーから指摘があり、後のアップデートで会話イベントの発生をオンオフ切替できるように仕様変更がなされたと考えられる。
部屋でのタップイベントは起床時はすべてマイナスに働く
レイの部屋にてレイに対するタップイベントが実装されており、寝ている時(22時~5時)はナイトドライブに誘うために話しかけて起こしているのと同様の扱いになり、運が良ければ起きてナイトドライブに付き合ってくれるイベントが発生する。
他方、起きている間のタップイベントに関してはすべてセクハラ行為という扱いになり、徐々に好感度が下がっていき下限まで到達してもやめない場合はレベルダウンしてしまう。
乗らない時間があると徐々に下がる好感度
安全運転を行い好感度を最大にまで上げた状態であっても、Lei05 の仕様として乗らない時間は裏で徐々に時間経過で好感度が下がってしまう。1日で下がる好感度は微々たるもので、おおよそ次の日に5~10km 走行することで最大に戻せる程度の量ではある。
ただしこれが週末にしか運転しない、毎日の運転距離が短距離である等のカーライフだった場合は好感度を上げるためには一念発起して長距離ドライブを強いられることとなる。それが楽しくてちょっと遠回りで走ったりするユーザーなら構わないがそうでないユーザーにとってはデメリットしかない仕様になってしまっているのは残念なところ。
残念ながらこれを回避するにはその日最後に車を降りる際に通常モードに切り替えておいて、次の日にレイモードに戻すという運用を強いられることになってしまう。
好感度は下がるのはあっと言う間、上げるのは大変
この好感度システムはLei05 においては基幹のゲームシステムになっており、レベルを上げることで衣装の解禁確率が上がったり、起動時スプラッシュが増えたりと様々な恩恵を得ることができる。ただしこれまで述べてきた仕様を鑑みると、好感度を上げる機会よりも下げる機会の方が多いため、人によってはなかなかレベルが上がらないどころかどんどん下がっていってしまうという残念なことになってしまう可能性がある。
Lei05 はかなりゲーム寄りな仕様
Lei05 はLei02 に非常に近い仕様で基幹システムが作られており、レーダー探知機と言うよりもギャルゲーレーダーと言わんばかりのゲーム寄りの仕様になっている。「あくまでレーダー探知機としての機能はオマケであって、メインはレイとのコミュニケーションに重きを置き、レイとのドライブを安全運転で楽しんでください」というのがきっとこの製品のコンセプトなのだろう。あくまで予想ではあるけれど購買ターゲット層としてはこれまでずっとレイを購入してくれていたドライバーおよびギャルゲー要素をドライブに取り入れて運転を楽しみたい層を想定しているんじゃなかろうか。
Lei04(03, 03+)はレー探とゲームを絶妙なバランスで実装している
では従来の製品であるLei04 はどうかと言うと、好感度というシステムは存在しない。そのかわりにコイン獲得制となっており、Gセンサー設定の厳しさと走行距離に応じてコインが獲得できるようになっている。前後左右すべて標準のレベル3設定にしてある状態だと、おおよそ10km=1コインだ。
コイン獲得は即時ではなく、翌日に前日の獲得予定だった枚数が精算される仕組みとなっており、前日の運転で頻繁に転ばせる等の運転をしてしまうと獲得予定だったコインをぶちまけてしまい獲得枚数が減ってしまうペナルティが課せられる。
コインはレイの衣装解禁や酔い止めなどのアイテム購入が使用用途となっており、衣装については総走行距離と季節に応じて販売解禁となる(最大6000km)
運転しない日があっても特にペナルティなし
一度獲得したコインは衣装やアイテムの購入を実施しないと減らないから、運転しない日があったとしても特にペナルティにはならない。当然ながらコイン獲得を意識してわざと遠回りしたりご機嫌取りをする必要がない。走行距離が少ないとコインを獲得できないケースは勿論存在するが、総走行距離はキッチリ計上されているので、衣装解禁に徐々に近づいていくため普段のカーライフを維持しつつ、花を添える程度に楽しませてくれる。
当然ながらこの頃は音声認識システムなど存在しないので、同乗者と会話していようが音楽をかけていようが特に気にする必要はない。あくまでも運転のお供にレイが慎ましやかに座するのみである。
レーザー式オービスには対応していないデメリットはある
とはいえ、肝心のレーダー探知機としてはレーザー式オービスには対応していない。これだけは他のレーザー式オービス対応のレーダー探知機を別で取り付けする必要がある。固定式レーザー式オービスであればGPS 情報が提供されているので取締エリアとして地図上に表示することは出来るだろうが、可搬式オービスとなるとLei04 だけでは太刀打ちできない。
ゲーム性すら不要ならLei Lite という選択も
とは言うものの、キャラクターには興味はあるけど特にゲーム性は求めていないという場合もあるだろう。そういう場合にはLei Lite という選択肢がある。このシリーズはキャラクターはノーマルレイ、ちびレイが最初から選択でき、衣装追加は特にないという簡素なものとなっている。価格もこれまでのシリーズの中では3万円台で購入できるなどリーズナブルなのも特徴だ。
最悪にして非常に残念な問題点
と、ここまで記述しておいてなんだが最大にして非常に残念な問題点がある。それは現在ユピテルが販売している霧島レイシリーズがLei05 のみであり、Lei04 およびLei Lite は完売御礼、生産終了となっていることなんだ。
ユーザーの選択肢を狭めてしまうのはよくない
Lei05, Lei04, Lei Lite ともに基幹となる仕様やコンセプト、価格帯、訴求対象となるユーザーがそれぞれで異なっているのにも関わらず、Lei05 しか販売しないというのは非常にもったいない。私がそうであったように自身のカーライフに合わないから買うことができないし、通常のレーダー探知機と比較すると価格が2倍するという点で躊躇するユーザーに対しても商機を逃しているのではなかろうか。
Apple ですら廉価版や過去のスマートフォンをまだ生産して販売している
選択肢が多くてユーザーを幅広く取り込んでいる例としてわかりやすいのがApple のiPhone だ。この記事を書いている2022年2月現在、最新機種はiPhone 13 シリーズであるが、Apple はまだ2年前のスマートフォンであるiPhone 11 や、廉価版であるiPhone SE を販売している。これはすべてのユーザーが最新機種のスマートフォンが欲しいわけではなく、値段が下がった少し古い機種や、出来ることは狭められてしまうが非常に安く、スマートフォンデビューにちょうど良い廉価製品が欲しいライトユーザーの存在があるから、まだ販売し続けているのだと考える。これらの機種を販売することなくiPhone13 を販売し続けていたらきっと機種変更せずにそのまま使い続けるか、自身の需要を満たす他のスマートフォンへ切替を行ってしまうかもしれない。
手放した理由は自身のカーライフに合わなかったから
ここまで読んでくれた人は手放した理由をある程度察してはくれているだろうと思うけど、Lei05 の基幹仕様とコンセプトが我が家のカーライフに合わなかったんだ。割と市街地に住んでるから平日は嫁さんを職場まで送迎するだけしか運転をしないし、非番の日は1日車を動かさない日だってある。休日も10km 圏内での買い物だったり、月イチに4,50km ほど離れた大型スーパーやショッピングモールに行くくらいの生活でそこまで距離を走らない。だいたいの場合運転している時は隣には嫁さんが同乗しているし、カーステレオもそこそこの音量で流している。
霧島レイというキャラクターも霧島レイシリーズのレーダー探知機も好きではあるけど、実際にLei05 を取り付けし、運用してみてた結果、このカーライフを犠牲にしてまで設置したいとは思えなかったんだ。優先すべきはギャルゲーレー探ではなく自身の家庭だったので、非常に残念ではあるが程よくバランスが取れていたLei04 に戻したというわけだ。
Lei05 はお嫁に出した
当然ながらLei05 がダメな製品であるというわけではなく単にNOT FOR ME なだけであったので、このまま物置に眠らせておくにはあまりにもったいなさすぎる。ダメもとで色々掛け合った結果、良縁に恵まれ譲り先が見つかった。転売対策として保証サポート外になるケースが存在したので譲渡の場合はどのようになるのかを公式に問い合わせしたうえで、回答に従い無事に譲渡手続きまで終わらせた。お嫁に出した先で大事に扱われているならば何よりだ。
もし今後シリーズが継続するなら
Lei05 に関してはいろんな口コミを見ている限り相当賛否が分かれている製品ではあるし、中には結構な勢いでコキ落とすレビューもあったりで開発されてるユピテルのみなさんが不憫でならない感情もあった。ただ色々熟考した結果手放している自分のようなユーザーも居るので、Lei04, Lei Lite の再販あるいは同様のコンセプトの製品を今後用意してもらいたいなとは思う。選択肢がなくて新しい霧島レイシリーズが欲しいけど買うことができないというのはあまりに機会損失過ぎるし、新規ユーザーを取り込むにしてもゲーム性に特化し過ぎていて敷居が高く感じるユーザーも居るだろう。
霧島レイ自体が菓匠とのコラボや今後霧島市のご当地キャラクターとして世の中に広く認知されていくことを考えると、ユーザーに様々な選択肢を用意して手にとってもらえる機会を増やしてくれることを節に願う。